春に

『ああ、もう、春なんだね――』
そう言って、君は穏やかに微笑んだ。

春の息吹きが満ちていくことに、その薄紅が花開くことに、君はいつからか、優しく笑いかけるようになっていた。
痛みを感じていないわけではないだろう。
だけど、いつしか君は、その痛みさえ優しく抱きしめるようになっていた。
舞う花びらを手に取り、柔らかな日差しに目を細めて。

『春、なんだね……』

想う心は、弔いと共に埋めて。
君は、また、強くなった。

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そんな那岐→千尋（忍千前提）もいい、と想う今日この頃。