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※ちょっと忍人さんルートネタバレ含むので、たたみます。






視界の隅で、金糸が揺れたような気がする。
木漏れ日のような微笑みをその顔に浮かべて、己の名前を呼ぶ姿が見えたような、気がする。
幻だろうか。
――それでもいい、と忍人は力なく笑った。

わかりきっていた。
刻まれた魂には、もう僅かしか時間が残っていないこと。
今少しでも無理をすれば、命は業に飲み込まれ、消えてしまうこと。
彼女の隣には、もういられないこと。
それでも、良かったのだと思う。
あの蒼目が涙に濡れることより、光を失ってしまうことの方が怖かった。

(そう……俺は、君を失うことが、怖かった)

何よりも、恐れていた。
この豊葦原に舞い降りた姫が、消えてしまうこと。
同時に、強く望んでいた。
彼女が王として立った後、共に並び歩む者として、己を選んでくれないだろうかと。
もう、望みはついえた。
しかし、恐れていたことを回避することは叶った。
なら、いい。
彼女が失われてしまうことに比べたら、己の命など取るに足りない。
約束を守れなかったのは心残りだが――これで、いいのだ。

桜が舞い散るその向こうには、穏やかな春の空が広がっている。
柔らかな日差しのせいか、急速に温度が失われていくはずの体が温かい。
この感覚は、何かに似ている。
雲ひとつない青に、愛しい少女の面影がうかんで、ああそうか、と納得する。

(君は、この空そのものだ)

陽光よりも優しい色の髪と、澄み渡った天を閉じ込めたような瞳を持った――己が仕えるに値すると認めた、ただひとりの王。
この世界の誰より、愛する、ひと。

(この空の下で、逝くならば……本望、だ)

視界いっぱいに、空――その向こうにいる少女も一緒に――を、焼き付けて、目蓋を閉じる。

「……ちひ、ろ……どうか、――」

薄れていく意識の中で、名前を呼んだ。
遠い声を、聞きながら。

――――――――――――――――――

あの幻影を見せたのは、忍人さんが心底千尋ちゃんを愛していたからではないかと。
そうなら、きっと忍人さんは幸せなのではないかと。
そう思うのです。
まだ、あのエンディングをもう一度見る気には、なれないんですが。
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